会長挨拶

令和という新しい時代を迎え、日本はオリンピック・パラリンピックの開催に向けていよいよ盛り上がってきています。第10回日本禁煙研究会学術集会を千葉で開催させていただけることを誠に光栄に感じております。

オリンピックの日本招致に尽力された嘉納治五郎先生は、近代柔道の創始者でもあります。柔道修行の過程から、自らの力をよいことに用い、皆が平和に共存しよりよく生きる「精力善用、自他共栄」の考えに至り、海外に赴いた際に人々に説明されていたといいます。

驚くことに、嘉納先生は受動喫煙を慎むべきこととして、1925年に以下のように書かれています。「我々は知らず知らずのうちに、人の迷惑になるようなことをしております。……汽車の中で無遠慮に煙草を吹かす人がありますが、これも人の迷惑に気がつかんからでしょう。……一度、自他共栄ということが広く人々に了解せらるるようになれば、今日の社会生活は大いに改善されるであろうと思うのであります(嘉納治五郎体系第9巻55頁)。」

この後半世紀を経て、受動喫煙は人の迷惑になるばかりではなく、能動喫煙とともに健康への影響があることが明らかとなりました。日本の受動喫煙環境が徐々に改善してきていることは、みなさまも実感されるところが多いかと思われます。これは、多くの研究者、医療従事者、教育従事者、立法・行政担当者と理解ある市民の方々の努力の賜物です。深く感謝を申し上げる次第です。

しかし、現在も一部の車両で喫煙可能なスペースがあります。このほか、日本の受動喫煙対策は国際的に厳しく批判されています。園や大学を含む学校での敷地内禁煙は常識となっているとはいえません。家庭での室内喫煙の頻度は最近10年間で減少したとは言え、まだ30%もあることが研究から裏づけられています。いまだに非常に多くの子どもたちが受動喫煙のために知らず知らずのうちに健康を奪われ、授かった命の善用の機会を失っていることを思うと、胸が痛くなります。

今回の学術集会のテーマは、「吸わせない 20過ぎても いつまでも」といたしました。私たちには子どもの健康を守るために、さらに能動喫煙・受動喫煙対策を推し進め、維持していく責務があるという認識を新たにし、平成の時代までの努力の積み重ねを2020年のオリンピック・パラリンピックに生かし、令和の時代以降に引き継いでいきたいと存じます。明るい未来を切り拓くために、多くの方々のご参会をお待ち申し上げます。

2019年5月31日(世界禁煙デー)

会長 鈴木 修一
(国立病院機構下志津病院小児科)


学術集会過去情報